前回は、奈良・正倉院のお話から木の持つ調湿効果のお話をさせていただきましたが、
今回は視覚効果についてお話させていただきますね。
木が多く使われたお店や、古い建物に入ると、何となく心が落着いて癒される感じってありませんか。
どうして癒しの効果があるのでしょうか。
木を切ると、柔らかく白い部分と堅く濃い部分があり、白い部分は 「春日」 と呼ばれ
春から夏にかけて成長した部分。
濃い部分は 「夏目」 と呼ばれて、夏から秋に成長した部分です。
この季節によって異なる部分が層になり年輪になります。
そして木の切り方によって 「柾目」 と 「板目」 にわかれます。
この木目は、ろうそくの炎や小川のせせらぎと同じように自然界にしかつくれない
不規則なリズムを刻んでいます。
そのリズムには四季のうつろいや気候の変化によってもたらされ自然な ゆらぎ があります。
この自然由来のリズムが木目を見る人の心身を癒してくれるそうです。
さらに木肌には人の目に有害な紫外線の反射が少なく、逆に波長の長い光を反射するため
見た目もあたたかいそうです。
また、この温かみには木(無垢材)特有の色合いの変化もあります。
15年も前に建てさせて頂いたお家にお伺いさせていただくと、無垢材の床が施工させて
頂いた時よりきれいで驚くことが良くあります。
何とも言えない、深みある色合いに変化しているからです。
木は使い込んで、時が経つに連れ色合いが変化していきます。
もちろん、日の光による焼けもありますし、木自身の持つ色合いによって変化の
度合いも違いますが歳月を重ねるはどに趣のある 「 あめ色 」 に変化していきながら
より温かみが生まれてきます。
これがお寺や歴史ある建築の柱や床に見られる深みです。
この変化を 「 径年美 化 」 と言うそうで、暮らしとともに深まってゆく天然木ならではの
あじわいです。
お施主様によくお話しさせていただきます。
「作ったもの(工業製品)は、出来あがったときから衰退が始まっていきます。
でも本物は、古くなっるのではなく深みと味わいが増していくと思って下さい。
アンティーク家具や風化レンガも同じです」 って。
まだまだ、木の良さはあります。
次回もお楽しみに。