先日、奈良の正倉院展を拝観してきました。
歴史を重ねた宝物の存在感や美しさはもちろんのことですが、
1250年もの永い年月を経て現在の私たちが目にすることができることへの感動と
驚きの思いでいっぱいになりました。
現在のような科学的な管理システムの無い時代から剣に屏風、布の衣服や敷き物、
文書の紙までもが今もなお文字が読み取れる状態で保存されていたのですから
どのようにして先人たちは守り継がれてきたのか?
その答えの1つが 木 にありました。
下記、読売新聞の記事の抜粋です。
【 正倉院宝物は1250年もの間、どのように守られたのか。
校倉(あぜくら)造りの宝庫の ヒノキ材 が湿度を調整して保護したことも1つだが、
それだけではない。
むしろ、効果を発揮したのは「唐櫃(からひつ)」という 杉 の箱だ。
かぶせ蓋を閉じ、高い蜜閉性を保ってきた。
宮内庁正倉院事務所の調査でも外の湿度が50%変動した場合、宝庫内の
変動は20%、さらに櫃内は3%に抑えられていた。
成瀬正和・保存課長は「唐櫃と校倉の二重の 『木の箱』 が宝物を守った」 と語った。
中略
昭和になると、宝物は温室度を管理する鉄筋コンクリートの新倉庫に移り、空になった
唐櫃は古い倉庫に残った。
現在、宝物の箱は火や水に強い 桐 が多くを占めつつある。
制作する1人、京指物(さしもの)の前田友一は、奈良時代に工具がなく加工できなかった
桐を100個を超すカンナで自在に整える。
唐櫃の果たした役割の重みは常に意識する。「脇役だが、なくてはならないもの。
私も後世のために、恥ずかしくない箱を造りたい」
宝物とともにあった先人の祈り。それは次代にも受け継がれていく。 】
どうでしょう、私たちが木の良さを何百回説明するよりも先人たちが木の大きな特徴である
調湿作用を教えてくれています。
そして他にも、木には人にやさしい良さがたくさんあります。
その木をつかって、先人から伝わってきた日本の気象風土とにあった日本の家。
大それたことは出来ませんが、無くなりつつある日本の家の良さを絶やさぬように
していきたいものです。